地球温暖化の監視役
北極圏は、北極域の端にある約1650万平方キロメートルの地域で、その中心を地中海の約5倍の大きさを持つ北極海が覆っています。北極圏は、気象的には、最暖月(7月)の平均気温が10℃を超えないところで、それ以下では木が育たなくなると言われる樹木境界線よりも北にあたるともいいます。
この地域は、他の地域に比べて3倍の速さで温暖化が進んでいます。海水で出来た氷の薄い層でできている海氷は、1970〜80年代には3メートル近くあった厚さが、現在では平均1メートルにまで減少しています。
毎年夏になると海氷は半分ほど溶け、9月には北極海の3分の1ほどしか覆っていません。このままのペースで進めば、2045年には夏の終わりに海氷が残らない状態になると気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は指摘しています。
私たちはおそらく北極圏を守り、この地が育む海洋生物の多様性を知る機会を持つ最後の世代なのです。
- 70 % 40年間で消滅した海氷量
- 4,000 m 深さ
- 6カ月 毎年の北極点での極夜の長さ
- 10 km 海氷内での1日の漂流距離
タラ オセアン財団の挑戦
1893年に冒険を敢行した帆船フラム号に続き、2007年、スクーナー船タラ号は北極の過酷な環境に出発しました。
この初探査は、気候変動の現実と美しい未知の自然の姿を世に伝えました。
知られざる北極圏、気候危機の監視役
北極は気候危機の影響の最前線にあります。海氷表面の気温は、世界の他の地域に比べて平均で2倍の速さで上昇しており、海氷の減少、氷の質の変化、さらなる太陽エネルギーの吸収、永久凍土の融解、大気中の湿度の上昇など、環境への影響はすでに非常に顕著になっています。
タラ オセアン財団のミッションの目的は、こうした変化のダイナミクスを記録し理解すること、科学的データを客観化すること、そして地域の生物多様性の豊かさを把握することにあります。北極中心部の過酷で厳しい環境では、年間を通し、且つ、長期間継続した研究を行うことは不可能と考えられてきました。これを担うことこそが、タラ極地ステーションのクルーたちの任務です。
海氷に閉じ込められ、北極海の中心から始まる20年以上にわたる科学探査。それが私たちのミッションです。
北極は非常に豊かで、長期間にわたる研究がほとんど行われていないため、研究のフィールドは非常に広く、北極への海洋生物の移動とその進化、大気化学、気候変動が北極の生態系の機能に与える影響、バイオテクノロジーと生物医学の研究、極限環境における生物の適応に関する研究などがあります。
このような未来の知識は、より良い理解と、北極圏だけでなく他の地域の環境保全にも希望を与えてくれます。こうした世界有数の研究センターが行う学際的研究はすべて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候モデルの精度のさらなる向上につながります。
私たちの探査
タラ号北極圏プロジェクト
アーカイブ
北極圏の果てを進んだ帆船、タラ号
2006年、タラ号チームとフランス国立科学研究センターは、フラム号の航跡のように18ヶ月間海氷に閉じ込められたまま北極海を横断し、欧州委員会と共同で気候変動に関する科学的調査を行うという、人間的にも科学的にも並外れた観測探検に乗り出しました。
タラ号海洋プロジェクト
分析進行中
帆船初の北極海ワンシーズン周航に成功
タラ号海洋プロジェクトの研究者たちは、史上初めて、ロシアとカナダの北極圏におけるプランクトンの生物多様性を観察し、他の海洋生態系と比較することに成功したのです。北極圏の固有種は、人類にとってとても貴重な存在です。